漁師たちは、常に海鳥と関わりを持ってきました。何千年もの間、漁師たちは海鳥から恩恵を受けてきたのです。中国や日本では、漁師は鵜を使って魚を獲っていました。南太平洋の漁師は、地平線上の海鳥を見て、漁をする場所の目印にしていました。鳥が見えることは、その日良い漁ができることを示す吉兆だったのです。しかし、近代的な技術の導入と商業漁業の慣行の普及により、その関係性には変化が起きています。かつて恩恵と考えられてきた海鳥は、現在は問題ととらえられることが多くなっています。
図1 – 写真 – グラハム・ロバートソン – ワタリアホウドリ(Diomedea exulans)は世界中で漁船に強く引き付けられ、混獲のリスクにより絶滅が危惧されている。
近代漁業では、漁師たちは餌や魚屑を舷側から海面に投げ入れることがあります。海鳥はこれらの簡単に得られる食事にすぐさま反応し、漁船を狙って追いかけることを学習しました。つまり、漁師たちはうかつにも、海鳥に船を追いかけるよう教えてしまったのです。はえ縄漁の場合、これは漁師たちにとって、努力量あたりの漁獲高が減ることを意味します。なぜなら、海鳥が釣り針から餌を取っていくので投縄あたりの餌の数が減り、1回の投縄で捕獲できる魚の量が減るからです。そして減った分の漁獲を取り戻すため、より多くの燃料、賃金、時間を費やすことになります。
実際のところ、魚を見つけることに関しては、鳥は私たち人間よりはるかに優れています。数百万年の進化の結果、海鳥は鋭い嗅覚と驚くほどの視力を獲得しました。彼らは最大30km離れた場所から漁船を見つけることができます。 これに強風と荒れた海況でも長距離を飛行できる能力を追加すれば、完璧な空中捕食者、腐食者の完成です。海鳥は、漁船がいればタダで餌にありつけると学習してしまったのです!
地域漁業管理機関(RFMO’s)は、海鳥の混獲を減らすため、漁業者に非常に具体的な勧告を提供する国際機関です。はえ縄漁船に対しては、鳥おどし装置(トリライン)、最小限のデッキライトのみを使用する夜間投縄、または加重枝縄のうち、最低でも2つの回避措置の使用を、特に南緯30度以南と北緯23度以北で勧告しています。
これらの措置は鳥よけの効果はあるものの、問題の解決にはつながりません。海鳥が舷側から投げ入れられる釣餌を視認できるという事実は変わらず、つまり海鳥はまだ潜在的な餌の存在を目で捉えることができるのです。この「誘引物」を完全に取り除く唯一の方法は、海鳥が釣餌や魚屑が舷側から投入されるのを見ることがないよう、確実にすることです。海鳥が釣餌、つまりタダでありつける餌を見る機会がなければ、船を追うことが減ります。そして、それは漁師にとってとても良いことで(投縄の際により多くの餌がついた釣り針が残る)、さらに海鳥にとってもとても良いこと(はえ縄で溺死する海鳥が減る)なのです。アンダーウォーター・ベイト・セッターは、漁師たちが、海鳥が船を「追わない」よう教える方法を提供します。海鳥が餌を見る機会が全くなければ、彼らが漁船を追う理由もないのです。
[1]Julien Collet, Samantha C. Patrick, and Henri Weimerskirch (2017) A comparative analysis of the behavioural response to fishing boats in two albatross species. Behavioural Ecology (2017), 28(5), 1337–1347.